東京高等裁判所 昭和32年(う)2439号 判決
被告人 恒川政一
〔抄 録〕
弁護人菅沼利雄の控訴理由は、末尾に添附する控訴趣意書と題する書面に記載するとおりである。
ところで、原判示事実によれば、被告人は判示武井巽等が判示化繊洋服生地を恰も純毛のそれであるごとく申し詐つて他人に売りつけるものであることを予見しながら、右武井巽の注文に応じて判示化繊洋服生地を数回に亘り、合計五二反を同人に引き渡し、同人等をして判示のごとく一四回に該生地を他人に売りつけさせて、同人等の詐欺の所為を幇助したというのであるが、すべて、正犯を幇助した従犯は正犯に従属する犯罪形式であつて、数人または数個の正犯を幇助した場合は従犯も亦数個成立する。このことは、幇助者の幇助行為が一個たると数個たるとによつて異るわけはない。それで、原判決が右のごとき判示事実につき、被告人の詐欺幇助罪の成立を数えて一四個としたのは、まさに、当然とする所である。果して然りとするならば、被告人の幇助行為そのものを判示するに当り、単に、「武井巽から注文をうけた都度、注文をうけた化繊洋服生地数量ずつ合計五二反を同人をして受け取らしめた」旨とのみいつてその受け取らしめた回数、日時、その都度の数量等の点につき何等説き及ばなかつたとしても、被告人につき一四個の詐欺幇助罪に該る事実ありとする有罪判決として毫も欠くる所はないこの理は、原判示と略同様の事実摘示をした本件起訴状の記載についても、同様にいつていい。それ故に、原判決並びに本件起訴状に詐欺幇助事実の摘示として不備なものがあるとして非難する論旨第一点は独自の見解による主張として採用するに由なく、従つて該論旨は理由ないものというの外はない。
(尾後貫 堀真 入山)